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そもそも、古代宗教の神話に見られる冥婚譚は世界中に広く分布しており、有名なところではエジプト神話、ギリシア神話などが挙げられます。 エジプトの太陽神オシリスの結婚譚や、ギリシアの冥府神ハデスも同様、死と生、彼の世と此の世に隔てられた者同士が結ばれるという帰結の伝説、神話の物語です。
しかし、このような冥婚は単なるお話には留まりません。 現在に伝わる風習として残っているのは東アジアから東南アジアなどですが、特に中国、韓国、また台湾などでは未だに伝統的な行事、神事として扱われていることもあるのです。 日本では制度としては1949年、法律として正式に禁止されましたが、一方で、一部地方では秘かに根差し、儀式として残っているのが実情ともいえます。
では、そもそも冥婚とはどのような制度でなされるものなのでしょうか?
生前を独身で過ごしひとり旅立った死者には、死後世界における伴侶が存在しません。 孤独な魂はやがて、その寂しさから遺族に取り憑くようになると恐れられたため、共に埋葬される配偶者を見つけてやらなければならないと考えられるようになりました。 これは、風習として未だ根強く見られる東アジア、東南アジア圏の宗教思想が、祖先崇拝と密着した倫理構造のために儀式として確立したともいえます。
独身、もしくは成人に至る以前に亡くなった子供(特に男子)は、子孫を残さなかったという意味で祖先としての資格を持たないと見なされました。 死後に婚姻を結び、亡くなった男子に養子を迎えることで、遺族は慰霊に並び立嗣(跡継ぎを設けること=子孫を残すこと)を遂行し、そうしてはじめて死者を祖先として合祀することが可能となるのです。
史実として考えられている記述の最古は魏の時代、つまり一般に三国志として認識されている周辺の時代に相当します。 三国志に登場する孟徳の家系である曹魏直系(曹宗家)に、冥婚と考えられる記述が魏書の中で見られるからです。 夭折した子供(男子)の葬儀にあたって、同時期に死去した娘の遺体を貰い受け、夫婦として埋葬した旨が記されています。
死者を弔う際、伴侶と見られる異性と婚礼を挙げさせ夫婦とした後、死の世界へと送り出すという冥婚の体裁は、人形やその他の依代、また故人の婚礼を描いた絵などを棺に納めるといった形も見られます。 また、故人の形見の品などを供養させる、寺院に奉納する、など一般的な婚姻関係にも見られる方法に近しい形態もあり、このような冥婚は日本にも風習として見られる一方、フランスでは1959年に民法として死後婚姻が定められています。
2006年、中国では遺体の売買が禁止されましたが墓の盗掘は後を絶たず、遺骨の盗難や殺人事件にまで発展、ニュースとして報道されました。 2008~2010年に実施された冥婚の実地調査では、若い女性の遺骨や遺体が調査当時の値段で日本円にして約15~75万円の値で取引されているとの報告もあります。
また台湾における冥婚での紅包風習は、日本のテレビ番組が取り上げたことで話題になりました。 死者(この場合は未婚女性)との結婚を強いられるとされる一方、家同士の婚姻という形から金銭的な援助を受けられたり、また死者である女性(妻)の神秘的な力によって運気の上昇が図れるとして、自ら志願する男性もいるのが実情です。
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