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実の娘が2人もいるのに「なぜ」血の繋がらない家政婦に全財産を譲り渡す遺言を残したのでしょうか?これだけ聞くと「不条理!」「娘が可哀想」などの世論もあります。では詳細はどうなのでしょうか?
新聞記事やニュースによると家政婦は中学を卒業して直ぐに資産家の女性に住み込みで世話をし始め、50年支えてきました。世話になった人に報いたいと思うのは自然な心情かもしれませんが、第三者に全財産に渡す事は可能なのでしょうか。
遺言が正式な物であれば第三者に全財産を譲る事は可能です。ただし、相続権のある遺族側が申し出れば「遺留分」が認められます。実の子供であれば遺留分として法律上の相続分の半分が認められますが、あくまでも遺言通りに遺産相続が行われる事が前提になり遺言を認める形になります。
実の娘の主張では「遺産が思った以上に少ない」点を挙げ、判断能力の低下した母親を騙して資産を着服したと主張しています。
しかし裁判長は資産家の女性の死後に家政婦が帰郷した際に現金5千円しか持っていなかった事が不自然であり、実の娘が長年無心しており海外移住費として平成14年に「これが最後だ」とする念書を取っていた点から家政婦の着服は認められませんでした。また娘側の「遺言は不合理」とする意見には「自身の行いを省みない事」として批判しています。その他に資産家の女性が亡くなった当日に遺産の殆どである約3千万円を預金口座から娘達が下ろしており、遺産は家政婦に渡らなかった事実があります。
判決は家政婦側の全面勝訴で、娘達に対して遺産約3千万円の返還請求が認められました。
この裁判のようにドラマのような勧善懲悪的な結果は非常に珍しいケースですが、キチンと遺言を残したつもりでも争いの種になる悪い例にもなりました。
遺言の有効性については議論になりますが、認知症だったからといって直ぐに無効とはなりません。しかし多くの判決で無効となる裁判が見受けられるのも事実です。遺言を残したいのなら内容だけでなく有効性が法的に認められるように立会人を複数準備する・公正証書役場を利用する・弁護士など第三者に確認してもらうようにします。
正式な書式で自筆で作成しているから問題ないし、遺産なんて殆どないから大丈夫なんて高を括っていると大変な事になることもあります。
有効性を主張する際に効果的な方法は主治医の診断書を添付する方法で一定の法的効果が期待できます。加除変更に関しては部分的に変更するよりも全部書き直した方が書き間違いを防げます。
立会人には立会人として認められない欠格者があり、未成年者・被相続人・公証人の親族・目が見えない(筆記が読めない)・口授が理解出来ない・署名出来ない人などが欠格者に該当します。
タイプライターなどで書いた・日付印を使った・レコーダーに吹き込んだ・2人共同などの遺言は無効になるので注意が必要です。基本的に自筆自署で、日付なども自筆が必要となります。立会人の欠格者が遺言作成に同席しても内容を左右させたりしなければ有効となります。
遺言の有効性に関する裁判は年々増加傾向にありますので対策は万全にしておくと良いでしょう。
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