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この『父の終活と母の形見』では、娘の立場から、父がおこなっている終活と、心臓の病で2年前に突如この世を去った母がのこしてくれた遺品について、それぞれお話をしていきたいと思います。終活といっても、何を整理するかは家庭によって様々かと思います。このコラムで綴るお話はあくまで我が家の一例ですが、このコラムをつうじて「これはやっといた方がいいな」「そこを整理しておかないと子供が困るのか」といった、皆様の終活への助力や興味につながれば幸いです。
母が急逝したのは二年程前の、ある寒い冬のことでした。日頃から、母はとても健康に気をつけていましたし、突然の病に倒れるとは、家族の誰ひとりとして想像していませんでした。そのような中で、母の死を受け入れる間もなく、まず私たち家族がしなければならないのは、母の葬儀でした。
それまで、葬儀について何ひとつ考えたことがなかった私たち家族は、病院で紹介された葬儀社に、母の葬儀をお願いすることにしました。ほかにどういった葬儀社があるのか、どこの葬儀社がよいのか、そういったことを誰も知らなかったからです。なにより、母が突然亡くなった事実に気が動転していて、その状態から緊急を要する葬儀にたいして、自分たちで一から調べて手配するといったことを、そのときの私たちにできる気もしませんでした。
「ほかの葬儀社なら、どんなお葬式ができたんだろうね?」振り返って考えてみたところで、結局のところはあとのまつりです。
母の葬儀は、葬儀社が用意した会館で、家族と親戚を集めた数人の家族葬として執り行われることになりました。私たちは最後のときを、母を想いながら、ただ静かに見送りたいと願いました。
わずかな人数の葬儀ではありましたが、時間をかけてしっかりと見送りたいという気持ちから、二日間にわたって通夜と告別式をしっかりと行うプランを選びました。葬儀会場には家族が泊まれる部屋が隣接されていましたので、一泊二日の間、私たちは最後のときまで、母が横たわる棺の側にずっといることができました。私は寝食をその会場で行い、気が向いたときには母の顔を覗きにいきました。そして、母の頭を撫でたり、頬に触れたり、最後の時間を惜しむかのように、横たわる母の側をうろうろとしていました。
生前の母は明るい快活なひとでしたが、小さな子供のように純粋な心の持ち主でした。急にひとりであの世に放り出されて、母が心細くならないように、そばについていてあげたかったのです。「大丈夫だよ。お母さんはいままで、みんなにたくさんの幸せをくれたから。だから、そっちの世界でも、きっと大切にしてもらえる。閻魔さまには、私がお願いしておくから」そんなことを、母に語りかけたものです。
母は植物が好きなひとでした。昔から、家のなかにはグリーンや花がありました。当然、葬儀の打ち合わせでは、母の棺の周りには美しい花祭壇を置いていただくようにお願いしました。「どのようなお花がいいですか?」担当のひとにそう訊かれたとき、ある懐かしい情景と母の笑顔が、唐突に、私の心に鮮明に思い出されました。
「小さな花が好きかな、かすみ草みたいに」もう何十年も前のことです。当時まだ若かった母が、そう言っています。その日は、ちょうど母の日でした。それをきいた私は、母にかすみ草を贈ろうと心に決めます。貯金したお小遣いを握りしめ、近所のスーパーにひとりで向かいました。
「かすみ草をください」店員さんにそう伝えると、「かすみ草だけでいいの?」と少し不思議そうに訊ねられました。かすみ草だけでは、華やかさにかけたからでしょう。「うん、お母さんが好きなの」私は小さく頷きました。すると、店員さんも頷き、かすみ草だけの花束をつくってくれました。母が言うように、かすみ草は本当に小さな花でした。手に持ってみると、とても軽くて、ふわふわと空に飛んでいきそうな気がしました。
私はかすみ草の花束を抱えて満足し、家に帰ろうとしました。しかし、ふと、私の心に小さな不安がよぎりました。「かすみ草を飾る花瓶、あるのかな」花が好きな母ですから、家にもいくつか花瓶はあるでしょう。けれども、それらはすでに、ほかの花を飾るのに使っているかもしれません。「花瓶も一緒に、お母さんにあげたらいいんだ」私は花瓶を探すことにしました。しかし、そこは田舎の小さなスーパーです。肉や野菜はあっても、花瓶はなかなか見つかりません。そのとき、レジの横にある特設ワゴンのなかに、ひとつの花瓶を見つけました。「あった ! 」私はかすみ草を抱えて、ワゴンに駆け寄ります。
その花瓶は色が黒く、形は角ばっていました。正直、あまり可愛いとは言えません。しかし、かすみ草の花束とあわせてみると、大きさはちょうど良さそうです。見た目に少々不満はありましたが、これで母が好きなかすみ草をちゃんと飾れると思うと、母の喜ぶ顔が目に浮かんで私は嬉しくなりました。そうして、たくさんの白いかすみ草の花束と、黒くて角ばった花瓶を両手に抱えて、私は家に帰りました。
かすみ草と花瓶を渡したときの母は、満面の笑顔で喜んでくれました。
そのときの私は気付いていなかったのですが、そのあと何年か経ったのちにその花瓶を見返すと、それは花瓶ではなく卓上のペン立てでした。当時の幼い私は、花瓶とペン立ての違いもわかっていなかったわけです。
母は当時から、きっと気付いていたはずです。「フフフッ」と優しく笑う、母の楽しそうな声が聞こえてきそうな気がしました。
白く愛らしいかすみ草が、ほかの花に混ざってふわふわと揺れています。お葬式の花祭壇には、母が好きなかすみ草をたくさん入れていただけることになりました。 花祭壇には淡く優しいピンクや黄色の花が、明るい彩りを添えていました。棺の前や後ろ、そして両脇に、花がふんだんにつかわれました。
私は祭壇だけでなく、棺や骨壷にも、美しい花の絵柄が入ったものを選びました。花が空を舞うような絵柄が可憐で、母の明るい性格や軽やかなイメージにぴったりだと思ったからです。
「お母さん、見てよ。すごく綺麗だね」会場を見まわしながら、私は棺に横たわる母に、そっと心のなかで語りかけます。「わあ、本当に素敵ねぇ ! 」母が今にも起き上がって、満面の笑みで私と一緒になって喜び出しそうな気がしました。
最初から最後まで、美しい花に囲まれた葬儀となりました。私は葬儀の合間をぬって、何枚か写真を撮りました。華やかな花祭壇と、美しい棺、そして最後に小さくなった母の遺骨が入った花柄の骨壷の写真を。母との大切な最後の時間を残すように。
葬儀に何を求めるかは、そのご家族によって異なることでしょう。けれど、“ 故人が喜んでくれるお葬式にしたい ” という純粋な想いに変わりありません。葬儀の形式やプランは、様々なものが用意されています。どのような葬儀をどれくらいの価格で行いたいか、日比谷花壇では葬儀の事前相談をすることができます。お花屋さんならではの美しい花祭壇や花装飾は、故人への心からの感謝とともに、きっと遺族の心も癒してくれることでしょう。
先にすべてを決める必要はないかもしれません。しかし、事前に検討し、ある程度の目星をつけておくだけでも、いざというときの安心材料になります。いつかの未来を見据え、ご自身やご家族と共に、生前から検討してみるのもよいのではないでしょうか。
大切なご家族が、あなたのことを想って執り行ってくれるお葬式。あなたは、どのようなお葬式で見送られたいですか?
〜 かけがえのない日々と、たくさんの愛に、ありがとうの花を 〜 『 日比谷花壇のお葬式 』 https://www.hibiya-lsp.com/ 『 お花あふれるお葬式 by HIBIYA-KADAN 』 https://www.ohana-afureru.com/
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