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この『父の終活と母の形見』では、娘の立場から、父がおこなっている終活と、心臓の病で2年前に突如この世を去った母がのこしてくれた遺品について、それぞれお話をしていきたいと思います。終活といっても、何を整理するかは家庭によって様々かと思います。このコラムで綴るお話はあくまで我が家の一例ですが、このコラムをつうじて「これはやっといた方がいいな」「そこを整理しておかないと子供が困るのか」といった、皆様の終活への助力や興味につながれば幸いです。
「戒名を先につくっておこうかと思うんだ」ある日、父が出し抜けにそのようなことを言い出しました。戒名とは、日本では一般的に亡くなった人につける風習があり、魂につける仏様の世界での新しい名前のことを指します。ちなみに、いま私たちが使っている名前は俗名と呼ばれ、これは生きている身体につける名前です。戒名は宗派によって、法号や法名とも呼ばれます。「戒名って生きているうちにつけてもらえるものなの?」私が驚いて父に尋ねると、そのような私の驚きとは裏腹に「わからないけど、つけてくれるだろう」と父はあっけらかんと答えるのでした。父は決して熱心な仏教徒というわけではありません。手をあわせている姿も、母の墓前か法事でしか見たことがありません。「戒名をつくるにはお金が掛かるからな。先につくっておいたほうが、お前たちも楽じゃないかと思うんだ」父は昔から数字が好きな人で、交渉ごともある程度の自信があります。先に自分が納得する料金で希望の戒名を準備しておけば、いざという時に子供たちに手間や負担をかけなくて済むし安心だ、と思い至ったようです。たしかに、私や兄たちがいざその時になって、父に適切な戒名を選び、金額は妥当なのか調べ、必要とあれば交渉する、ということは恐らくしないでしょう。親を亡くした悲しみのなかで、ただでさえ他にやらなければならないことが山ほどあるのです。「戒名はよくわからないし、お坊さんのおっしゃられるとおりに」というふうになり兼ねません。
戒名は「位号」「道号」「戒名」「位号」で構成されていますが、それらを総称して「戒名」といいます。戒名には位号というランクがあり、これは本来、故人の信仰の深さや社会貢献によって決まります。しかし、どのランクの戒名であろうと戒名をつけてもらうにはお金が掛かります。戒名料は寺院(宗派)によって異なりますが、数万円〜百万円以上と言われており、希望するランクが高くなるにつれ、その値段は上がります。「地獄の沙汰も金次第」という言葉もありますが、仏教の世界もなかなか世知辛いではありませんか。戒名料にこれほどのひらきがあると、もはや何が適正な料金か、私などは皆目見当がつきません。こういった費用に抵抗を感じたり、戒名を授かることに疑問を感じる方も増え、最近では “ 戒名はいらない ” という選択をされる方も少なくはないようです。私自身も「その気持ちも、わからなくないなぁ」と、つい考えてしまいます。しかし、我が家の父は例え疑問に感じながらも、そういう習わしはきちんとやりたい人です。
「お父さんの戒名は、どのランクにするの?」と尋ねると、「母さんと同じランクになればいい」と即答でした。先立った母よりランクが低いと父のプライドが傷つくでしょうし、高くてもあの世にいる母が納得しそうにありませんので、なるほど、納得の答えです。戒名は生前につけてもらえるものなのか、私がネットで調べてみると意外や意外 “ 戒名とは仏弟子になった証として、そもそも生前に授かるもの ” という考え方があるようで、そういった生前戒名を授けてくださる寺院は多くありそうです。どうやら父の希望はすんなり叶えられそうだと、私は胸を撫で下ろしました。しかも、故人に授けられる戒名は遺族が故人の生前のおこないや人柄をお坊さんにお伝えして、故人にあった戒名を授けてもらうのが通例ですが、生前に授けてもらう場合には、寺院によってはお坊さんに相談しながら自分の好きな漢字を戒名に入れていただくことができるようです。本人が存命なのですから本人の意向が尊重されて然るべきという仕組みのようで、そのような特典もあるのかと驚かされます。
「お父さん、戒名に入れて欲しい漢字ってあるの?」そう私が尋ねると、父は黙って首を傾げます。「お母さんは着物が好きだったから、戒名にもそういう漢字が入っていたよね。お父さんの場合は…… 仕事 ?」私がそう言うと、「……何だか、可哀想だな」と父は苦笑いを浮かべます。仕事が趣味のような父。納得がいかなかったのか、少しショボくれたその顔に、私は思わず笑ってしまいます。私が知っている父といえば、仕事に一生懸命 ・ 嘘をつかない ・ 海や山などの自然が好き ・ 頭が良い ・ 泳ぐのが好き ・ トマトを食べるが好き……。少し考えただけでも、いろいろな父の姿が心のなかに現れます。そうして考え出すと、改めて父のこれまでの人生や人柄に触れる想いがしてきます。父が何の漢字を選び、どのような戒名を授かるのかはわかりません。しかし、せっかく前もって準備をするのです。父にとって納得のいく戒名を、きっと手に入れられることでしょう。そして、いつかの遠い未来に--。「この戒名、一緒に考えたよね」お墓の前で手をあわせた私たち家族が、お墓に掘られた父の戒名を眺めながら、このときのことを日常のなかに息付いたひとつの幸せな記憶として、懐かしく思い出す日がくるのかもしれません。
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