葬儀と花、香の人類史

遥か昔から続く、葬儀とお花の関係

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葬儀と花の関係性は古く、約5万年前のネアンデルタール人のシャニダール遺跡から埋葬された骨とヤグルマギクとノコギリソウの花粉が発見されたことから始まっています。

 

洞窟の中は、それらの植物が育つ環境ではないので、ネアンデルタール人が意図的に埋葬したものと言われています。
このことから古代の人類は故人を悼む習慣があり、そこから悼むために花を飾るという習慣もあったとされています。
ただし、ネアンデルタール人は、その後絶滅しており、諸説ありますが、共通先祖を持つものの、現生人類(ホモサピエンス)とは別の種とされ、現生人類が墓地に花を飾った最古の例はイスラエルで見つかっており、約1万2000年前の中石器時代となっています。

いずれにしても、人類が文明を持ち始めた時から人々は墓地に重要な意味を見出し、その墓地を花で飾る習慣は、世界中に広く伝わっていることになっています。

古代の墓地に飾られた花は、ミントやセージといった香りが強い花であることが多く、このことから、埋葬の際は花の香を大切にしたのでは、という説があります。

仏教では、お釈迦様が仏様に対してお供えのために青蓮華の花を手向けたことから、亡くなった方に花を手向けることが始まった、とされており、仏教が始まったころから死者に花を手向ける習慣があったと考えられます。
日本でお香が伝わったのは、仏教の伝来と同時期と言われており、最古の書物「日本書紀」からもその記載があります。

現代でも継承されるお葬式のかたち

現代でも葬儀においても、花も香もとても重要な役割を果たしています。
例えば、仏教のお葬式で霊前にお供えするお金を「香典」「香料」とよび、キリスト教では、「お花料」と呼びます。
香典は、お香・線香の代わりとしてお供えするもの、キリスト教はお花の代わりにお供えするもの、という意味になります。

 

もちろん葬儀の当日でも「焼香」「献花」「供花」といったように、亡くなった方を弔うために、お花と香が使われています。

現代では、仏教の葬儀だけでなく、無宗教で葬儀が行われることも増えてきました。
しかし、無宗教の葬儀であっても、花と香の重要性は変わらず、むしろ宗教的儀礼が少なくなった分、よりフォーカスがされるようになっています。

亡くなった方に対して花を手向ける意味。
それは人それぞれの思いがあると思いますが、言葉には表せない、理由を超えた人類共通の普遍性があるように思えます。

この記事を書いた人

株式会社日比谷花壇 
フューネラルプロデューサー
金澤 和央(カナザワ カズオ)
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